「くれぐれも気をつけるように」

先輩の通夜には同期の数人で待ち合わせ、I君に最寄り駅でピックアップしてもらった。早めに着いたので、私たちは先輩のお顔を拝見できた。奥さんからその後の電話で聞いていたとおりの安らかなその顔は、今にも目を開けて「あれ? みんな、どうしたの?」とでも言いそうだった。

隣の部屋に奥さんが「喪主」と書いたグレーの花を付けて立っていた。近寄ると私の顔を見て彼女が言った。「ウチの人、死んじゃったのよ。」

「うん。」

私は彼女の肩を抱いた。いかにもなオーバーアクションだったけれど、それしかできなかったのだ。

弔問客はどんどんやって来た。お経が読まれ、焼香が始まるともう、流れ作業のお別れだった。中学生たちも先生に引率されてお別れにやって来た。先輩は中学の教員なのだ。主幹教諭でもあり、たぶんハードワークではなかったかと思う。

ゼミの仲間で姿を見かけたのは22、3名。この日は人が多かったので、ゆっくり話すことはせず「また」ということで散会した。

後で、来られなかったH君の伝言を聞く。同期のH君は遠方だから来られないだろうとは思っていたが、「みんなによろしく」というありきたりな伝言ではなかった。

「このところ落ち着いて、みんなに喪中葉書を出そうかと思っていたところ今回の知らせで本当に驚いた。しばらくは上京できないので申し訳ないが、こんな事が続くので、みんなにくれぐれも気をつけるようにと伝えてほしい。」

私にこれを伝言してくれたUさんによれば、H君の奥さんが6月、くも膜下出血で亡くなったのだそうである。

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