Archive for 2012年11月16日(金)

署名活動あれこれ

最近は人が集まるときに署名用紙を持っていき、その場の雰囲気を見てごそごそ取り出し署名をお願いしている。

今、私が集めている署名は、腹腔内化学療法・腹腔内温熱化学療法を保険適用にしてほしいというのと、腹膜偽粘液腫を難病認定してほしいという、2つがあるのだけれど、両方お願いするには説明が不十分になりそうな気がして、とくに集めたいと思っている腹腔内〜のほうだけを持って行くことが多い。

しかし、ここ二度ほどの集まりには両方とも持って行った。どちらもゆっくり説明できそうだと思ったからだ。

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一度は母の運転手として一緒に行った、伯母の七回忌。

この時は、事前に母の了解を得る必要があった。母は、私の病気が皆に知られるようなまねはやめてほしいと言った。それは私の病気を隠したいというより、単純に、親戚付き合いというか社交上の面倒な「行ったり来たり」を発生させたくない、ということのようだった。

「もう手術しちゃったんだから、私がというより仲間のためにだし。でも、万一再発したら、またお世話になるんだけどね。」

意外とすんなり、母は「わかった」と言ってくれた。

そうして、久しぶりに会った従兄弟や叔母にどちらも署名してもらった。切り出すタイミングは想定どうりだった。

「pomちゃん、たくさん食べて。ほらこのエビフライも取りなさい。煮物もおいしいよ。評判のお店の仕出しなんだから。」

親戚の家に来れば、いつまで経っても私はおチビちゃんだ。

「あのね、たくさん食べられなくて。実は。。。」

そうして、去年手術したことから話した。

私の幼い頃からよく知っている人たちだから、「それでもう治ったの?」と聞く言葉は遠慮抜きで、なおかつすごく案じているのがわかる。

「治ったよ。」

ほら、こうやって運転手で来られるくらいだし、ダンゼン元気でしょ? あ、でも、シイタケとコンニャクはやめとく、腸で詰まっちゃうといけないから。

「良かったね!」

皆、安堵したようだった。この手の病気で治ったかどうかは、もう少し時を経ないと判断できないだろうが、ここで心配させることもない。

箸を動かす合間に、署名用紙が皆の膝を回って行った。いつも感じることではあるが、一人一人の筆跡から伝わるその思いに、じーんとしてしまった。

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もう一つは、ちょっと前にあった展覧会で。

その展覧会には私も以前から数回出品しており、常連の先輩方とも親しく話せる間柄だ。他の場でお会いする方もずいぶんいて、すでに腹腔内〜のほうは署名済みの方もいるので、それじゃあ難病認定もお願いしますとばかりに両方持って行った。

懇親会のときや会場内をぶらぶらしているときに、皆さんに書いてもらった。

「仲間に書いてもらうから用紙を頂戴。」

と署名用紙を持ち帰ってくださった方もいた。ありがたいことだ。

(これまでもその場で書いてくださるだけでなく、自ら集めてくださった方もいらっしゃった。本当に本当にありがとうございます。)

そんな感じで展覧会に参加して、出品者に署名してもらっちゃうという一粒で二度おいしいスゴ技をやっていたところ、展覧会の事務局長が

「あそこに座っている人たちにもお願いしちゃえば?」

と言ったのである。

「あそこに座っている人たち」は、この展覧会の出品者でもなければ観に来た人でもない。同じ館内での別の催し物が始まるのを待っている、全然知らない人たちなのである。

街頭署名ならぬ館内署名だこれは。

一瞬、躊躇したが、ダメでもいいじゃん、そんな病気があるってことを、そんな療法があるってことをちょっとでも分かってもらえたら。よし、突撃だ〜〜。

「あの〜すみませんワタシこの展覧会に出品しているpomと申します突然すみません!」

……署名をお願いしてわかったことがある。

1)数人に向かってじっくり説明するほうが良いらしい。1対1だと疎ましがられる。

2)若い人はナニげに話を聞いていてくれても、目は合わせず「署名しません」オーラが。たぶんそれは、内容に賛同しないからでなく、本名と住所を知らない人に教えるのは「あり得ない」からである。個人情報を預かることになってしまうので、本当に難しいと思う。私自身、街頭署名や街頭募金はその場ですることは少なく、署名や募金したいときは一応調べたりしてしまうし。

3)「その病気、TVで見た」という方が一人いらっしゃった。そうなると、比較的そのあとの説明がスムース。

そんなこんなで結果発表。1時間半で13名の方にご署名をいただけたのだった。

さらに。署名してくださった方々に深々頭を下げて引き返そうとすると、とある婦人が(女性がというより「婦人」がふさわしい方だったので)

「ちょっとあなた!」

と私を呼び戻した。「あなた、名刺持っているなら頂戴。」

「今、取って来ますのでちょっとお待ちください。」

個人情報を心配されているのだろう、せめて私の素性が知りたいのだと慌てて取りに行き、その方にお渡しした。すると、その方は私にもご自分の名刺をくださってこう仰った。

「私のところに用紙を送ってくれるかしら? 少し集められると思うわ。」

なんと! 全然知らない人なのに。

有り難い 漢字で書いて 意味を知る

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ここまで読んだ人、すごい。ブログにしては長いもんねえ、いつものことだけれど。そこで、気分転換に?画像を入れてみました〜。そう、まだ続くのよ〜〜。

「フィナンシェです。どうぞ召し上がれ!」

お菓子にはそんなメッセージが添えられていた。一口ほおばると、しっとりしていてアーモンド粉のしっかり感とやわらかな甘さが広がった。オイすぃ〜〜!

これを手作りして私にくださった方とは、会ったことがない。不思議なことだ。

実はこんな話である。先ほどの展覧会の出品者の一人に、今年の前半、偶然お会いすることがあった。私は会った彼女に、署名をお願いした。彼女はその場で快く署名してくれたうえ、署名を集めてくれる、そして「妹にも頼んでみる」とも言った。

手作りのこのお菓子をくれた人は、彼女の妹さんである。

お姉さんと離れて暮らす妹さんも集めてくれて、姉妹で別々に私に送ってくださったのだった。それも、妹さんは1枚15名分がいっぱいになると、送ってくださる。きっとお知り合いの一人一人に説明して1枚を埋めるのだろう。ありがたすぎる。

署名とともにいつも温かいお手紙が添えられている。お姉さんの知り合いというだけの私に、こんな温かいお手紙を書いてくれるなんて。なんか最近、涙もろくなってきたなあ私も。

そしてこの展覧会に、妹さんから託されたフィナンシェをお姉さんが私に持って来てくださったのだ。

「フィナンシェです。どうぞ召し上がれ!」

いつもの、あの温かい筆跡だった。