書家が字を書くときのように
歌うたいがうたを発するように
字にはもとのかたちがあり、
歌には楽譜というテキストがある
それでもそれらは震えながらこの世界にあらわれるのだ
何時の頃からか
世界で初めての、誰も見たことのないフォルムを
美を、感動を拵えたいと考えてはじめていた。
果たしてそれは意味のあることだったのか。
そういう物ができたとして、それは驚きではある
かも知れないが、真直ぐひろく響くか。
ぼくが立ち、誰かも立っていたはずの庭に吹く風
を描こうと思ったんだろう?誰もがジブンの懐から
取り出して見ることができるもの、そのきっかけ
を。虫を描くのが好きだった。壜や撓んだ布を
描くことに夢中になった。世界中の大半の人が
できることをそれと同じことを少しだけより響く
ように描けた。