【その日のとある患者さんのご家族の年配男性】
書くべきかどうかと思ったのだけれど。
私の前に診察室に入った人たちはかなり年配の方たちで、漏れ聞こえてくる声はなごやかなムードに感じた。
その方々が出てこられ、廊下の奥のほうへ向かうや、男性が「泣くんじゃない!」と叱責した。怒られて余計に泣く子のように、患者であろう女性が声を上げて泣いた。
「泣いたって、病気は治らないんだよっ!」
追い打ちをかけるように廊下に男性の声が響き、女性はさらに泣いた。
私は、いくつかのことを思う。少なく見ても私より20歳以上は人生経験を重ねている人である、それでも病気は辛いんだなってこと。それからーー
何も怒ることないじゃん。それより優しくしてあげてよ!
それからーー
辛いのは患者だけでないのだ。家族も悲しいのだ。患者の夫なのか兄なのか、昔ながらの感覚で、どうしようもない悲しみが怒りに変換されちゃって、ついあんなふうに怒っちゃったのだろう。。。
【その日の夫への報告】
弟に促され、帰りの海老名S.Aで夫に電話で結果を報告した。
「ああ、、、そう。。。」
スマホから聞こえる夫の声はそれだけだった。
その夜、夫が仕事から帰ってきて私に言った。
「行かなくて、ごめんね。」
そんなこちらこそ、みたいなことを言えばいいのに、私は「べつに?」と言っていた。