父は長寿遺伝子にスイッチ入れてます

「これまで生きてこれたことがもう、凄いことなんですよ。」

父の主治医が、心臓カテーテル検査(&ステント留置)後の説明時、私たちに言った。そしてこう続けた。「今日、突然死しても、全然おかしくないんです。」

父があとどれくらい生きられそうなのか、聞きたいと思っていたのだけれど、どうもそういうところを超えた状況に、もはや父はいたようだ。

「(循環器外来に経過観察で)pom父さんが来るとき、いつも一人で来るじゃないですか。89歳で付き添いもなく来られる人なんて滅多にいませんよ。7年前に心筋梗塞やって高血圧でもともと片肺機能してなくて、心臓も肥大してて不整脈で、薬でコントロールしているとは言え、凄いですよ。それで今回、心不全に肺炎併発ですからね、もう、神様に選ばれた人としか言えないですよっっ。」

状況把握していない家族にややキレそうになりながら説明する主治医に、義妹も私も「はあ。。。」みたいな感じだった。だって、父は目をぱっちり開けて、普通に話してるし。ベッドが低反発で柔らかすぎだと文句を言って、家から座布団持って来させてるし〜〜。

父はこれまで老人なりに普通に生活できていて、お金のこともきちんとやっている(私よりマトモ)。足の悪い母に代わって日常の買い物もするし、問題があるといえば、認知症が始まったのか勘違いが時々あり、ガンとして引かないので、母や私たちと口論になってしまうことがあることくらいだった。

「pom父さんを一日も早く退院させてあげたいと思っています。自宅介護ですよね? 就寝時は酸素吸入したほうが良いでしょう。入院しちゃうとだいたい、高齢の方は元の生活レベルまでは戻らないんです。もう歩けないかもしれないし。認知症も進むでしょう。」

これまでの勘違いも、血管が詰まることから起こる認知症によるものらしい。

認知症が進むのも困るが、歩けないのも困る。トイレはどうするのだ? これまで介護認定すら受けたことがない人なのに。介護がそもそも必要だった人だったのか。

いろいろ考えてしまうが、しかし。

昨年1月に胆管癌で手術した母は84歳だけれど、今、主治医が驚くほどのハツラツぶり。「1年以上経って、勝ち組ですね。pom母さんは60代とまでは言わないけれど、70代に見えますよ!」と主治医から言われて、まんざらでもない母を見ると、全然ダイジョーブだわ〜、と思う。

母の主治医も、高齢者は退院後、元の生活には戻れないと仰っていた。だけれど、母はがんで手術したのがウソのようだと自分でも言っている。まったく前と変わらない。私以上に強靭な生命力である。

そんな母を見ているので、父も、主治医の予想を覆してくれそうな気がするのである。

私の両親は、私に「へその一つや二つ、なくてもどうってことない!」と私を励ます人たちである。「へそがなくなったら、ほぞも噛めないし〜」みたいな、なんでそんなジョークが、再発したと落ち込む娘に言えるんだ?な人たちである。そしていつも私に「くよくよするんじゃない!」と言うのある。

なんであんなに能天気でいられるのか。自分の親ながら不思議だ。しかし、そういう性分が長寿遺伝子のスイッチを押しているのだと、私は思う。

来週あたり退院できるかな、pom父さんは。

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