2年前に手術して退院したとき、二度とこんなのイヤだから絶対に再発なんかしないぞ!と誓った。誓ったのに、またやることになってしまった。
「腫瘍が取りきれて腹腔内温熱化学療法もしたのに、またなるのなら、再手術しても無駄では?」
「おへそは痛くもない。元気だし、食欲はありすぎだし。様子見ってのもアリでは?」
「また術後のへろへろ状態に戻るのは、今の元気さを考えるともったいないのでは?」
これらの疑問が浮かび、でもすぐに、ぼんやりとではあるが、これらを否定する答えが頭の中を占めた。
米村先生は先の手術後の説明で、4人に1人が再発する、と仰っていた。先日伺った20年無病率70%と同じことだろうか。そして、再発してもまた手術すれば20年生存率90%は変わらない、とも。そんなら手術しよーじゃないの。無駄に寿命を縮めたくはないもん。
だいたい、悪い細胞は外科的に取っちゃうのがてっとり早いと、素人の私は思う。問題は、見えないほど小さい、悪い細胞の存在。コイツがあるからこそ、肉眼的にはなんともない臓器でも潜伏(?)している可能性があり「え?そこも取るんすか?」的に拡大手術をするのだろう。
考えてみれば1つの細胞が目に見えるほど大きいものなんてあるわけない。ドバーっとそこに増殖してるからこそ目に見えるほどの大きさになるし、そうでなければ見えるはずもない。見えないヤツがあちこちにいる可能性は高い。
その見えないヤツを駆逐するのが腹腔内温熱化学療法なのだろうが、私の場合、駆逐しきれなかったというわけだ。その理由は何だろう? 全滅させるほどのチカラはないとか? 弱らせて長い期間(理想は老衰になるまで)黙らせておくくらい? 健康な人も毎日がん細胞はできるのだから(免疫細胞が攻撃して問題ない)、黙らせておく、くらいのチカラで大丈夫なのかも。でも黙っていてもくれなかった。
私の場合、腹腔内温熱化学療法を30分行ったと伺っている。米村先生はこれまでに2回くらい仰った、30分と。それ以上やったら危険だからそうなったのだと思う。でも残念ながら、ヤツらを駆逐するには時間足らずだったかもしれない。
また、もうひとつ。池田病院の帰り道のコンビニで偶然買った「文藝春秋 8月号」で、がん幹細胞の話が出ていた。九州大学の中山敬一先生を立花隆さんがインタビューしたもの。がんの親玉であるがん幹細胞はふだんは眠っているけれども、抗がん剤は活動している細胞しか狙えないので、ボスがお縄にならないってことらしい。
ちょろちょろしている悪い町奉行くらいはやっつけられても、悪代官までは無理ってことか。桜吹雪の刺青程度の抗がん剤でなく、早いところ、オールマイティな印籠が開発されてほしいものである。
もとい。
医学の話はまるでチンプンカンプンであるからして、他人が見たら「なにこのバカぶり」に違いないが、私なりに考えたことである。もはや目に見えちゃうほど増えちゃっているヤツらはこれ以上増えないためにもご退場いただかねばならない。(増えないとわかっているなら、そのままでも良いのだろうが。)
これまで、私の免疫細胞たちの防御すらかいくぐってきたワルたちである。今後、私がいかに免疫力を高めたって、そのままにしておいては負ける公算が強い。でも、外科的切除でヤツらの総勢を減らし、さらなる腹腔内温熱化学療法で残ったチンピラを黙られば、戦いを有利に持っていける。それからなら免疫力、すなわち私自身のチカラでなんとかいける気がする!
悪い細胞は死なずにどんどん増えていく。2倍、4倍、8倍、16倍、、、ゴキブリなんかよりすごいんだろう。早くしなくちゃ、早くしなくちゃ〜〜。
と、そんなわけで、とっとと再手術しようと思ったのだった。
さて、池田病院での診察で、米村先生は仰った。
「2度めは最初よりラクらしいよ。」
らしいよ、って、「患者談」ですかい。ったくもー、人を食ったような先生の言葉。が、もう二度とやりたくないと思っていた手術をまたやるのだから、これも良い情報である。
書き忘れたので追加:「腹膜偽粘液腫はお腹の中しか転移しない。それ以外は行かない」ということも、米村先生から何度も伺っている。だから再発・転移、といっても、そんなにビビる必要はないかと思っている。