順調すぎだった母にも、術後1週間めにして合併症がやって来た。
母曰く、白い巨塔的回診時、教授先生から
「ママぽんさん、今日は元気がないねえ。」
と声をかけられ(ってことは、いつもハッちゃけてるんだろ〜な〜)
「便秘でムカムカして調子が悪いんです。浣腸でもしてください。」
と答えたとか〜〜。で、ご希望どおり看護師さんに浣腸してもらってスッキリしたと思っている。実際は膵液漏と腹腔内膿瘍で微熱が出て、その処置もしてもらっているのだけれど。
主治医の先生からは合併症について説明を受けていて、テーブルの上には主治医の几帳面な文字と手慣れて上手い内臓の絵が書かれた説明書が置いてあった。
処置内容は、説明書によれば「膿の形がハート形になっているので、効率よく膿を出すために、2本チューブが入っている」「抗生物質も点滴で使用している」。
膵液が漏れたとか膿が出るなんて、全然普通だもんね。お仲間の皆さんの合併症との長い戦いを知っているから、まるでどってことないっス。
てな具合で、術前から私は始終「どってことないね」的態度なので、ママぽんもこれまでそんなに不安は感じていないはずだ。と思いたいところだが。
能天気な母でも不安がよぎる時があるらしく。手術前までは、引き出しを整理した、だとか、遺影は60代の写真がいいのよ、とか口走る時があったんだな〜。
そして術後、じわじわ調子が出てきて本人はもう安心と思ったところで悪くなったものだから(便秘で、だと本気で思ってたのかな、どうもあの人は本気なのかそうでないのかワカラナイ)落ち込んだのだろう、不思議な夢を見たらしい。
「退院した夢を見たのよ。」
「ふーん。」
母が見た夢は、退院して家に戻るとそこは母の実家で、母の母、兄、姉たちがいてとても楽しかったと。
「皆、亡くなった人ばかりじゃん。そっち行っちゃダメだって。」
「何ごちゃごちゃ言ってるの? 聞こえない。」
「死んだ人ばかり出てきてる夢見て、そっちの世界はまだ早いよ。」
「え? 聞こえない。」
相部屋で変なことを大声で言うのも憚られて、耳元で言っているのだけれど、耳がやや遠い母は「もー聞こえない!」と怒り出し、こちらも腹が立ってしまって、
「こんなにしょっちゅう来てあげてるのに、何その態度はっっ。もう帰る!」
「おー、コワっ。」
ったく、どこかなんだかな〜になってしまう私たちだった。