天邪鬼
全ての謎が解けてゲートの鍵を渡されたとしても、それを開けるかどうかはまた別の話。
かんたんなことはかんたんじゃない。
もぬけの殻だから誰もいないかと言うとそうでもない。残っているもので何とかして行くしかない。
カッパの皿のように零さないように。漏れないように。
かなり突き詰めたつもりだ。謎を解き、仕組みを解明した。そうして分かったこと。それとその先のことは全く連続性も関連も無く別のことだった。
先に進む手だては考え尽くした。それでも先に進めればいいと思っていた。先に進むことができればそれなりの世界が広がると想像していた。
本を読むのなら、机に座りその本を開く。後は勝手に読むように読む。かんたんなこと。
でもそれはかんたんじゃない。本を読もうと思うのは思ったとする。
机に座らない。
座ったとしてもその本を開かない。別の本を開くかまたは何も開かない。
何故席に着かなければならないか。
何故本を開かなければならないか。
意地でも思った通りになんてしない。
別に自分が憎い訳でもないけれど、自分の思った通りになんてしてやりたくない。
そもそも誰もいなくなった。
本を読むときに本を読む手だてを準備した彼はもういない。
だから本を読むことが特別なことになっている。特別なことなんかしている暇はない。
日々の1円玉や10円玉の数の方が重要ではないか。
始末はきちんとつける。それに反目するものはいない。そこはみんなでやっていける。