ドアを叩く音
深夜にドアを強く叩く音が長い間続いた。ベッドの中にいたから無視していたのだけれどそれは止まず寝返りを打って右耳を枕に埋めた。左側はほとんど聞こえないので便利なことにこれで耳を塞いだのと同じになる。
音を聞きながら不思議に思うことがあった。普通にドアを拳でノックする音とは違う。もっと低くて響く音。また通常の訪問者なら最初にベルを鳴らすだろうということ。
心当たりはあった。昼頃変な営業電話があり一旦は訪問を許可したものの面倒くさくなってやはり断っていた。それでも深夜に来るかな?また、ちょっと関係を悪くしている知り合いもあったがやはり深夜に漠然としか知らないであろうエリアに来るだろうか。
等々考えているうちに音は止んだようで、そこでふと目を開けると暗がりの中で僕は寝返りを打っていなかった。左を下にしたままだった。これは夢だったのかな。それにしては音も何もかもほとんど現実的だった。うつつとかではなく現実そのもの。半分眠りに落ちていたのは間違いない。音で気がついて出て行って文句を言おうか、それも面倒くさいかと迷ったのが悔やまれる。そこで起き出してふざけるなと、そこまでやっておけばそれが夢だったのか現実だったのかは完全にはっきりしていたのに。