丘々は、胸に手を当て
退けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。
原に草、
鄙唄(ひなうた)うたひ
山に樹々、
老いてつましき心ばせ。
かゝる折しも我ありぬ
小児に踏まれし
貝の肉。
かゝるをりしも剛直の、
さあれゆかしきあきらめよ
腕拱みながら歩み去る。
〈どこかで最初の2行を読んで、メモしておいたんだ。〉
汽車に乗って あいるらんどのやうな田舎へ行かう
ひとびとが祭の日傘をくるくるまはし
日が照りながら雨のふる あいるらんどのやうな田舎へ行かう
窓に映った自分の顔を道づれにして 湖水をわたり隧道をくぐり
珍しい顔の少女や牛の歩いてゐる
あいるらんどのやうな田舎へ行かう
〈小学生の頃読んで胸に残った。「あいるらんどのやうな」でぐぐって、想い出を取り戻した。〉
白い石段を上り詰めると、オリーブ畑の向こうに海が見えた。
トッポジージョの主題歌がラジオから流れる車内、フロントガラスに叩き付けるような雨。夜、どこへ向かっていたのだろう。
少しかび臭い半地下の教室で、懸命に形を取ろうとしていた。白い石こうの面、ワイン壜の緑。
潮水を飲んだ。助けられた後、足の切り傷に気付いた。
消そうとしている記憶があるか。決して消えない記憶があるか。
ミニスカートが良く似合って可愛かった。戻りたい季節はないけれど、戻りたい瞬間はないではない。
窓の縁を懸命によじ登ろうとしている子猫達。マルコが生んだ子供達だ。良く頑張ったなと声を掛けたら、嬉しそうな顔をしたような気がする。
光の中で会った。ついてきてはいけないと言われた。