新しい価値
若干の問題を抱えながらもiTMSJapanが始まったのは何を置いても目出たい。すでに普段なら3ヶ月で使うほどのCD代をつぎ込んでしまったこと。
他方、P2Pという技術(概念?)を知った時はひっくり返った。コンピュータを使い始めてそれほど長い月日が経った訳ではないのだけれども、少なくとも3回ひっくり返っている。友達の部屋で動くMacintoshを見て、こりゃいかんと思ったとき(これは正確には使用前)。次はまる2日かかってインターネットに接続できた時。それから、P2Pに出会った。
確かに著作者の権利を無視したダウンロードは絶対に駄目。でも世界中のコンピュータの共有フォルダが繋がって人々の叡智である様々な資産を必要な人が必要な時に引いてくることが出来る。全ての価値は一度壊れて、再構築される。これこそがコンピュータ…インターネット革命なのではないか。これで世界はいくらかは良くなっていくんじゃないか。ちょっと大仰だけれども、ざっくばらんにそう感じた。一部ではマイナス面だけが強調されているけれども、この「革命」の次を想像できないモノは終わっていくに違いない。
さてiTMS。「われわれは違法ダウンロードと戦う。訴えるつもりも、無視するつもりもない。競争するつもりだ」スティーブ・ジョブスの歴史に残るとも言える名言とともに始まったこのサービスの素晴らしさは人々を信頼するところから始めているということと、Appleらしく隅々までそっと気が配られていて使ってみると本当に簡単で楽しい、そんなユニークなシステムといえること。著作物には適正な価値が設定される。「提案」というような形で最初の価格は決められているけれども、それを所有したいユーザは自分にとって価値があるから手に入れたいと思う訳で、それは著作者に対価が正しく届くことで完結する。決してこそこそとタダで落としてきたりすることでは人は満たされないのだ。また、他方で著作者や管理会社、サービス提供会社の主張や利益が加味されてくる。そうして時間をかけて適正な価格は自然に決まっていくのだろうと思う。
先に行ったようにP2Pは素晴らしい技術だ。それが正しく活用されるためにもiTMSのようなサービスが堂々と在るということは大いに役立つだろうと考える。iTMSだけではなく、他の分野でもそれは起こってくるだろう。
「著作者の権利を無視したダウンロードは駄目」「価値は一度壊される」と書いたけれども、夜中に心から『ワシントン広場の夜は更けて』を聴きたくなって、P2Pソフトを使いダウンロードしたことがある。また、廃盤になってしまっていたり、日本では手に入れにくいものを探したこともある。それを見つけて聴くことが出来た時には非常に嬉しかった。ただ、こういうものに対価を手渡す仕組みがあったらもっと素晴らしいと感じた。
音楽だけでなく様々なファイルを例えばある非営利団体が一元管理するのが良いのかというとそうではないと思う。分散しているからこそ自由な価値の創造もあるのではないか。これから10年で何がどう変わっていくのか、そういうことに何らかの形で関わっていくことが出来るか。