向かいのホテルの屋上手すりにカラスがとまり、割合正確にインターバルを取りつつ二声鳴くという風景をしばらく見ていた。
曇り空の下で長い時間奴はそうしていたのだけれど、インターバルの間周囲の危険や興味を確認しつつの二声、体から絞り出すようにして。
向こうからしたら窓の向こうのこちらも何度も見ていたと思う。頭のいい鳥だから、ここにいる人間については手の出しようが無い安全な対象と思っていた。
何か目的があって鳴いていたのかどうかは知らない。しばらく見ていたら焦れたかのようにインターバルが短くなっていって、最後には飛び去って行った。河岸を変えてその目的を達成しようとしたのだろう。
夕方コンビニへと出かけたら、今度は猫がだみ声で規則正しく鳴いていた。
何となくだけどイオンという単語の響きがぴったりくるかな。ひんやりして本当に心地よい大気の日でした。
やさしい冷たさ。人を殺したり消耗させたりするのではなく、人の根っこまで優しく届いて一新してくれる冷たさ。
夏、熱くても湿度が低ければ心地よく過ごせる日がある。その逆に空気は冷たくても適度に水気が満ちていて海や川がある水の星に住む感覚を思い出させてくれる。年に数回しか来ないこの日、地下室に隠って仕事をするのはもったいなかったな。
わかりにくいかな。ほら、ほんの子供の頃、春なのにちょっと肌寒い日に遠足に行ったこと、ない?近場のはずなのにとても遠くを歩いているような感じがした。そんな日。