昨日のこと、トイレの前の壁に珍しい蜘蛛がいた。屋内で見るタイプではないから洗濯物かなにかに停まっていたのを連れ込んじゃったのだろう。
足が黒くて細長い。黄色のまだらがある。多分ジョロウグモの一種なのだと思うけれども胴は細く、まるでアメンボを黒く逞しくしたような感じ。
田舎育ちのくせにハ虫類系や蜘蛛・ムカデ系が苦手で、毒がないとか普通に接すれば攻撃してこないと判っているものでも触ることができない。この子たちの中にはむしろ益虫といえるものも少なくないのに。
よく見ると大変美しい連中ではあるのだけれども、多分形(アイコン)としてダメなのだろう。近所の子供がそういうものに馴染んでいる時期にコンクリートの病院の中にいて、出てきてもあまり外に出られなかったことが遠因ではないかと思ったりもする。
昨日の珍客もじっくり観察すると非常に美しかった。しっとりとしたつや消しの深い黒と鮮やかな黄色。無駄のないフォルム。手のひらに乗せてもっとじっくり見られたらいいのにと思う反面、やっぱりダメという気持ちがぶつかって二人の間に厚い壁を作るとともに彼の存在が圧倒的になってきた。
一方で少し弱っている様子から早く外に出してあげないととの焦りもあり、しばらくにらめっこ。もし触ることができたとしても暴れて足が取れてもかわいそう。結局そーっと袋をかぶせ、中に降りたのを確認してから窓の外に出すとゆっくりと歩いて去って行った。
ここに来てから、23区内でもこんなところがあるんだなと驚くことが多い。車道から脇道に入った奥にぽっかり出来た異空間のような場所で1日中鳥の声と風が木の葉を揺らす音がし、人的な音はあまり無い。入居した頃は共有部分の窓の向こう側にヤモリがぺったり佇んでいるのを見たし、でもそんな感じだから蚊が多いのには困った。何だか不思議な暮らしが続いて行く。