レッドソックスのシーズン終了くらいから最近まででTSUTAYAで借りて観たもののまとめ、メモ。
テンペスト
監督デレク・ジャーマンはシェークスピアの同名の戯曲を読んで感銘を受け、いつか映像化したいと強く思って、そのために敢えて舞台を見ることは避けていたのだとか。そのためか(もちろんジャーマンならではの解釈はあるのだけれども)意外に正面切ってじっくりと作り上げているという印象を受けた。それだけ本が良いということなのかな。昨今似非ファンタジーやら似非パロディやら(は、ここでは関係ないか)訳の分からないものが反乱しているけれども、こういう優れた作品をじっくり観るとファンタジーが本来持つうつくしい手触り感や裏に潜む悲しみなどを思い出させてくれる。Toyah Willcoxが良かったなあ。どうもあの方向に弱いみたいだ。Björkとか、日本でいうと内山理名とか、ソニンとか。自覚しているゾーンとはちょっと違うんだけれど。ホンノー?
サルバドール・ダリ
ダリの芸術家としての一生をまとめたドキュメンタリー作品。と言ってもあのダリについて、なので結構脚色してある部分もあったような気がする。ダリの絵は面白いものもあるけれどもそれほど好みではない。どう生きたのかとか交友関係に興味があって借りてみたのだけれども、目新しい発見はなかった。
Wataridori
映画公開時にとても観たかったのだけれども都合で行けなかった作品。DVDには久世光彦が脚本を書き、安田成美ナレーションの日本語バージョンが入っていたのでフランス語の響きも捨てがたかったのだけれども日本語版で観てみることにした。こういう記録モノは非常に好きです。だから期待していたし、実際期待通りだった。CG無しでまるで一緒に飛んでいるかのような驚愕の映像の連続、やっぱ映画館で観たかったな。それにしても、奴ら(Wataridori)は凄い。こういう映像を見るたびにニンゲンってのは地球にいる生物の、ある一系統にすぎないのだなと痛感する。
シークレットウインドウ
オーソドックスで起承転結がある、こういう映画らしい映画もたまには良いな。腰を落ち着けてずっぽりと画面の中に引き込まれてハラハラどきどき。ジョニー・デップは好きな役者で彼の作品というだけで割合良く観たりする。他にそう言う役者はあまりいない。もともと役者の名前とか憶えられないほうだし。彼を好きなのはちょっと気怠げな佇まいや、薄膜一枚向こう側にいるような儚げな存在感。逆にそのせいで彼が演じた役はよりリアルに感じるような気がしている。要は波長が合うのだろう。ちなみに一番好きな作品は「デッド・マン」。
シークレットウインドウでは少し気の弱い大衆小説書き。脚本はちょっとできすぎかなと思うほど良くまとまっているし、配役もジョニーの他もハマっていた。鏡の向こうとこちら、主人公の作家の幻と現実、ちょっとできすぎと言ったのはそういう多層構造が美しいカタチをしすぎているような気もしたから。でもかなり楽しめたよ。
最近恒例になりつつあるTSUTAYA週一の格安日のレンタルで先週「霧と砂の家」と「Round Midnight」を借りて来たのだけれど忙しくてRound Midnightは見られなかった。残念、もったいない。
霧と砂の家は「家」についての思い入れとか、移民の悲哀とか、良くできたストーリーだと思った。ちょっと作り過ぎかなという気もしたけれど、面白かった。移民の気持ちは実感するというわけにはいかないのだけれども、想像はできる。故郷のことを否定されたら、それは辛い。ただ、実感できない故のもどかしさはあり、それも含めて割合淡々と見てしまった。おまけの予告編にあったように全米が泣いた(とは書いてなかったけれども)というような感動には至らなかった。でも本当の悲劇っていうのは案外淡々としているものなのだとも思う。美しい絵づくりもあって、余韻は強く残った。
代々そこに在る家とかそれを継ぐという思いは洋の東西を問わずに強いものなんだね。先日のハリケーン、カトリーナの被害の最中、現地の人が家を離れたくないと強制退去を拒んでいた様子も思い出した。実家を放ったらかしていい加減な暮らしをしている僕でも田舎を大切に思う気持ちはないではない。ただ、そこまで執着はしないかな。
大統領の理髪師
東京映画祭のプレイベントとして昨年の観客賞・最優秀監督賞である『大統領の理髪師』が上映されるというイベントがあり、招待券を手に入れた友人のご相伴に預かり赤坂区民センターホールへと出かけてきた。この日は衆議院選挙の日。選挙権は事務所を置いている街に残したままなので、早めにそちらに向かいついでにひと仕事して近所の小学校で結果的には負けた人に投票。
無事友人と合流、鑑賞。映画はいきなり選挙のシーンから始まる。主演の俳優さんを含む家族が演じる庶民の風景がとても良く、自分と同時代だったことやお隣韓国の映画ということもあり妙に懐かしさも漂う。歴史的には日本の影も見え隠れしつつもそれを否定するでもなく肯定するでもなく、庶民の目ってそうなんだよなあと感心したり。そんな普通の人が大統領の理髪師になってしまって…というドラマ。でも庶民は最後まで庶民。しみじみとほっとする良い映画だった。サンキュ、友だち。
ひとしきり茶などして(お酒には少し早かった)、開票速報を楽しみに帰ったのだけれど、久米さんが番組開始直後に出口調査の結果を発表して、ああそうなの、と思ってなんとなくごろっと横になったらそのままうたた寝してしまった。
LOVERS
一言で言えば、チャン・ツィイーのイメージビデオって感じだったかな。チャン・ツィイーは好きな女優さんだし、金城武も割合期待している役者さん、そういう意味では楽しめた。かの大陸の自然の美しさも見どころ。
The Garden
Derek Jarmanというこの映画の監督さんの名前は聞いたことがあったけれども、ちゃんと作品を見るのは始めてかも。久々に突き抜けて面白いものを見た。一つ上げるなら、セロファンを重ねたような敢えて自然な合成を拒否したようなコラージュ的映像に逆にリアルな手触りのようなものを感じたこと、等々。徹夜続きのなかで時間を割いて見たので、若干眠気に負けてしまった部分もあったのだけれど、そこはDVD、その分立ち戻ったりして見た。仕事のアイデア探しというかアイデアをくすぐるために写真集など本を買うことがある。それは多分他者が見たら仕事と何の関係があるの?って思うようなモノだと思う。この映画はそういう本に通じるところが多数あった。つまり刺激がいっぱい詰まっていたということ。アマゾンで買おうと思ったら、売っていなかったのがとても残念。手元において時々見たいと思ったのに。まあ、TSUTAYAにあるのだから何度でも借りればいいや。
追)おっと、今日アマゾンを見直してみたらあった。片仮名表記だったのね。でも、ラッキー。紹介されているThe Last of Englandと併せてポチっと。(9/9 画像はイメージ)
ザ・セル
尊敬するデザイナーのひとり、石岡瑛子さんが衣装デザインを担当していたこともあり、公開時に映画館へ行って観たかった映画だった。結局それはかなわず、今回DVDで観ることができた。石岡さんのデザインはやはり素晴らしく、映画の魅力の大きな部分を担っていたと思う。
一つ間違えればひどく難解で見るに耐えなくなってしまう可能性もあっただろうし、描かれているのは冷静に考えればひどく残虐な犯行なのだけれども、映像の美しさによって観終わった直後はまるで明るいイタリア映画でも観たかのような錯覚に陥ってしまうほどだ。そう、それは錯覚で何かが胸の当たりに引っかかっている。重くて気持ちの悪いものだ。美しさとの落差故にそれは深いところで渦を巻き、だんだん大きくなってくる。
筋立ては思っていたよりもシンプルで、淡々としていたとさえ言えるくらい。それがまた後の嫌な気持ち悪さを増幅させる。この映画ダメなひとは100%ダメなんじゃないかな。ただ、心理の裏側に侵入して居座ってしまうようなこの嫌な感じが僕は気に入ってしまったので、とても印象深い映画になりました。
アイ ロボット
こちらはヒット作になった娯楽大作。CGモノというだけで毛嫌いする人もいるけれども、技術の進歩や新しい試みには素直に感心する。この中でもロボットの表情づくりが素晴らしい。強調しすぎず控えめな「演技」をしていたのが良かった。ウィル・スミスがやたらパイを旨そうに食べていたのも印象に残った。最近美味しいケーキとか食べてないなあ。
ロボットって実際にはどんな形で実用化されていくんだろう。企業等ではなく個人の生活の中へ。この映画でもかつてアトムがそうだったように「人型」で現れる。ロボットが担わされる役割は、一つではないだろう。それは移動手段であったり、防犯であったり、介護であったり、ペットのようでもあったり。当然「動くコンピュータ」なのだろうし、今Macintoshが仕事から趣味までいろいろ助けてくれているように、それが力を持って動くのならさらにいろいろな夢が膨らむ。当面今家に欲しいのは、うまい飯を作ってくれて経理と行政手続きをそつなくこなし、多少話し相手になってくれるような奴ならさらにいいね。足としっぽがあるコンピュータか。AppleがOSのコードネームにネコ科の大型動物の名前を使っているのってそういう理由だったのかな(笑)。
フォロウィング
断片化されて捻れて、回想風なので一見分かりにくいけれども、そこに上澄みのように見えてくるものは素直な感情とか意外に上質な味わいのようなもの。ただ、時期が悪かったのか全然関係ないのになぜか主人公と例の「ピアノマン」のイメージがダブってしまって困った。
猟奇的な彼女
公開時ずいぶん話題にもなったと思うのだけれども、ようやく観ることが出来た。こういうなんてことのない楽しいどたばた劇は好きだ。たまたま自分の周りにも強力でチャーミングな女性が多ございますので、なおさら恐ろしく楽しく…。